職種紹介

サウンドの仕事ゲームサウンド制作の仕事

ゲームサウンドに求められる考え方

ゲームは、映画のような映像作品とは異なり、インタラクティブなメディアです。
プレイヤーの操作次第で、ゲームの中のさまざまな効果音が鳴るタイミングは変わりますし、BGMが再生される時間の長さも一定ではありません。
たくさんの音が重なったり連続して鳴るような場面もあれば、しばらくの間目立つ音が鳴らないような状況も起こり得ます。
そのとき、同時ににぎやかなBGMが流れているかもしれませんし、何も音楽は鳴っていないかもしれません。

3Dタイプのゲームにおいては、空間内で音が鳴る位置にふさわしい音量や定位となるような調整が必要になります。
音を鳴らしている物体が移動したり、カメラの視点が移動した場合は、それに追従して音量や定位を自在に変化させなくてはなりません。
サラウンド再生や立体音響に対応しているタイトルであれば、前後左右に定位が変化するでしょう。
さらに、洞くつの中のような場面であれば、音に残響を加えるべきかもしれません。

Nintendo Switchソフト『ARMS』より

ほかにも、ゲームを遊んでいて一見何気ないように感じられる場面にも、サウンドデザイン上の課題はさまざまなものがあります。

・遠くにいる敵の音量は下げる。でも重要な敵の場合はむしろ目立たせたい。
重要な敵の音量を上げるべきか?
その時だけ周囲の敵の音量を下げるべきか?
・アイテムを取った時に短いファンファーレが鳴る。
そのファンファーレを際立たせるために効果音はミュートするべきか?
遊びの流れを止めないように、少し音量を下げるだけにとどめるか?
ファンファーレと周波数帯域がぶつかる音だけをカットするか?
・大勢のキャラクターが同時に登場するが、必要な効果音のすべてをそのまま鳴らすとうるさくなりすぎる。
細かく再生と停止を繰り返すか? 優先度の低い音は再生しないようにするか?

このように、ゲーム中に起こりうるさまざまな状況の中でも、プレイヤーが違和感なく快適にプレイできるようにするには、個々の音楽や効果音の音量バランスや帯域特性のバランスを整えるのに加えて、重要な音を際立たせる、不要な音を抑える、といった、鳴らし方の工夫を考えなくてはなりません。

サウンドクリエイターは、ゲームの中のあらゆる音楽や効果音に対して、

  • ・発音と停止のコントロール
  • ・音量や定位の計算
  • ・フィルターや残響といった効果の付加
  • ・音の優先度の管理

といったさまざまなロジックを使いこなし、音響的な設計に基づいて破綻なくサウンド演出を実現することに取り組みます。

ゲームサウンドの可能性を広げる技術

ゲームサウンド制作では、これまでに見てきたような基本的な考え方に加えて、音楽や音響についての専門的な知識や技術を活かすことで、より広いアプローチを取ることができます。

たとえば、ゲームの中の状況に応じて音楽や効果音を変化させることで、映画のような映像作品のサウンドトラックとは異なる多彩な感触を生み出すことができます。
音楽的な知識や理論の素養に基づいて、インタラクティブなBGM演出の仕組みを提案することもできますし、音響技術や信号処理の技術を活用して、サウンドエフェクトを自在に変化させるような演出を作り出すこともできます。

Nintendo Switchソフト
『スーパーマリオ オデッセイ』より

『Nintendo Switch』は、プレイスタイルに合わせて3つのモードを自由に選ぶことができます。
テーブルモードや携帯モードのときは、本体内蔵スピーカーあるいはヘッドフォン端子から音声が出力されます。 TVモードでは、HDMIケーブルからのサラウンド音声出力にも対応しています。
それぞれの出力特性にあわせた特別な音響処理を施すことで、プレイヤーがより快適にサウンドを楽しめるようにすることもできますし、立体音響技術を活用することで、プレイヤーの没入感を高めることもできます。

TVモード
TVモード
テーブルモード
テーブルモード
携帯モード
携帯モード

そのほかにも、膨大な音声データを効率的に扱う上では音声圧縮技術の知識が役立ちますし、音声認識技術を使ってゲームプレイに新たな面白さを生み出すこともできます。
音声合成の分野では、よりバリエーション豊かで活き活きとしたキャラクター表現になるように既成のシステムにチューニングを施すこともありますし、架空言語のボイス表現でゲームの世界観やキャラクターの魅力を高めるために、独自のシステムを考案することもあります。

サウンドクリエイターは、音の表現に関する発想力に加えて、音に関わるさまざまな技術や知識への関心を持つことで、ゲームサウンドならではの可能性を広げることができます。

ゲームサウンドを支えるプログラム開発の仕事

ゲームのすべてのサウンドは、プログラムでコントロールされています。一つ一つの音楽や効果音を適切なタイミングで鳴らしたり止めたりするのも、プログラムの緻密な制御によるものです。このため、ゲームサウンド制作の仕事は、ゲーム開発やシステム開発を担当するプログラマーの仕事と密接な関わりがあります。

ゲームサウンドならではのインタラクティブな表現や、音に連動したゲーム演出や遊びも、サウンド制作者のアイデアと、ゲームプログラム開発者の技術力やセンスが組み合わさって実現しています。

また、近年のゲームサウンド制作においては、より高度な表現や技術が求められるようになってきており、開発規模が拡大しています。多彩なサウンド表現を効率よく実現するためには、サウンド制作者の作業を支えるサウンドシステムや開発ツールが欠かせません。
サウンドシステムはグラフィックスやダイナミクス、AI、ゲームフレームワークといったさまざまな分野とも連携を取る必要がありますので、サウンドシステム開発者にはサウンドに特化した技術力だけではなく、プログラム能力と幅広い技術分野への関心を持つことが求められます。