職種紹介

デザイナーの仕事CGスペシャリスト

CGスペシャリストとは?

「CGスペシャリスト」は、デザイナーの中でも主に「CG技術」を扱うことでゲームソフト開発に貢献する職種です。 その意味では「テクニカルアーティスト(TA)」と呼ばれる職種に近いと言えますが、プログラムを書くのがメインというよりは、 さまざまなCGツールを駆使したり、高度なCGの設定を行ったり、時にはデザイナー向けのサポートツールを作成したりと、デザイナーの立場から「CG技術」を追求しゲーム開発に活用する仕事です。

ビデオゲームの進歩は、テクノロジーの進歩に支えられてきたといっても過言ではありません。
驚くほどリアルな映像や、見たことが無いようなユニークな表現、…そういったゲームビジュアルの進歩においても、CG技術の活用は欠かせないものです。

しかし、デザイナーが技術を扱うということに、ピンと来ない方も多いのではないでしょうか。
ゲーム開発において、「CGスペシャリスト」がどんな役割を果たしているのか、できるだけ分かりやすくご説明したいと思います。

どんな仕事?

まずは「CGスペシャリスト」がどんな仕事を担当しているのか、具体的な事例を紹介してみます。

(事例1)ライティング・質感表現

  • 例えば実写の写真や映像を撮影する際、「ライティング」はとても重要になりますよね。
  • CGにおいては、「被写体をどう見せたいか、何を目立たせたいか、見る人に何を感じさせたいか」といったデザイン的視点だけでなく、「ライティングや質感表現の仕組みをCG技術でどう組み立てるか」といった技術的視点も求められます。
  • どんなに良いモデルを作っても、ライティングがその良さを引き出さないと、良いビジュアルになりません。
    現代のCGにおいて、非常に重要な役割と言えます。
  • 上記画像は、実際にゲーム内でライティングを調整している様子です。ライトの機能を活用して、魅力的なビジュアルを構築しています。
  • 時間変化や天候変化、場所による大きな環境変化が起こるゲームでは、ライティングのシームレスな変化と各環境での魅力的な絵作りの両立が課題となります。エンジニアやアートディレクターとしっかり連携し、ライティングシステムを構築します。

(事例2)キャラクターアニメーションのための「リグ」開発

  • 3Dのキャラクターモデルをアニメーションさせる際、効率良くポーズを付けられるように、「リグ」という特殊なコントローラーを取り付けます。

  • 画像の、「インクリング」というキャラクターの周りにある矢印やラインなどが「リグ」であり、この仕組みの開発や取り付けを行います。
  • リグを付けることで、アニメーターの作業効率を高め、アニメーションの表現力を底上げすることができます。
  • 高校程度の数学の知識が必要で、かつ、アニメーター目線で扱いやすいコントローラーを構築することが求められます。

(事例3)モデリング~質感適用までのワークフロー構築

  • 3Dモデルは、下記のような工程を経て完成することが多いです。
  • その過程でデザイナーが繰り返し行う作業があるなら、自動化するツールを制作、もしくはエンジニアに発注し、作業フローを整えます。
  • 下の動画は、シンプルなベースモデルから、自作のツールを利用してディテール込みのリッチなモデルを自動生成している様子です。
  • リッチなモデルのディテール情報を、シンプルなベースモデルにベイク(テクスチャとして転写)することで、少ないポリゴン数でリッチな見た目を実現します。
  • 質感などのテクスチャは、モデルの形状やディテールから自動的にマスクを作成し、共通の質感を半自動で適用するフローになっています。
  • このようなワークフローを整備することで、モデルを効率よく量産することができますし、クオリティを均一に保つこともできます。

(事例4)プロシージャル(手続き的)な手法の活用

  • 以下の画像は、事前に制作された「洞窟のポリゴンデータ」になります。
  • このモデルの形状に基づいて、岩壁の凹凸形成、鍾乳石モデルの配置、質感の割り当てなど、プロシージャル手法を用いて自動で装飾しています。
  • このような仕組みを用意することで、大まかな構造だけ作れば、後の仕上げ工程がすべて自動化され工数を大きく削減でき、数多くの地形を作成可能となります。
  • また、この仕組みを通すことでクオリティの均一化にも繋がります。
  • 特に、遊び(レベルデザイン)に変更があり、この「洞窟のポリゴンデータ」が後から修正されても、再度プロシージャルに仕上げを行うことで、手早く修正サイクルを回すことができます。
  • デザインを仕上げた後でも、遊びのバランス調整が行いやすいフローになっています。
  • さらに、割り当てる質感のセットを変更すれば、さまざまな見た目に変更可能となっています。

以上が、担当業務の一例になります。デザイナーの中でも「技術に強みがある人」が活躍できる職種であることが少しイメージできたのではないでしょうか。

※上記すべてのスキルが必要ということはなく、自身の持つスキルに応じた分野を担当しています。

その役割をまとめてみると?

「CGスペシャリスト」の役割を、4つのキーワードにまとめてみましょう。

これらを担うのが「CGスペシャリスト」の役割と言えます。

ではなぜ昨今、このような職種が必要とされているのでしょうか? その理由は、ビデオゲームのグラフィックスがどのように進化してきたか、そこから分析することができます。

  • 高精細化:
    解像度が上がり、細かいところまで描写できるようになってきた。
  • 物量の増加:
    広大なフィールドや、たくさんの種類のアイテムなど、作るモノの量が増加している。
  • 表現力の向上:
    リアルな質感表現から、セルアニメのような絵作りまで、表現の「幅」と「質」が向上している。

上記のように、表現力は豊かに、できることは高度になっていますが、 質・量ともにデザイナーへの負担が増えることが懸念されます。

それを改善/解決していくため、事例のように作業効率化を提案したり、新しいツールを検証したり、
エンジニアと共に解決方法を模索したりといった「技術的な手段による課題解決」が非常に重要になってきました。

これをデザイナーの中で担当するのが、「CGスペシャリスト」というわけです。

任天堂ではたらくCGスペシャリストに
求められること

学生時代に、「CGスペシャリスト」のようなことをやっていたという方は、少ないかも知れません。 ですが、

  • CGが好きで、CGソフトを学ぶことが楽しい。
  • 面倒な作業を、効率化したり自動化したりすることに面白みを感じる。
  • ゲームやCGがどのように作られているか、調べたり試したりすることが好き。
  • スクリプト作成やツール導入など、技術的手段で問題解決することが得意。
  • 周りの人から、ソフトの使い方やコンピュータのことについてよく質問される。

のいずれかが思い当たる方は、CGスペシャリストの仕事に向いているのではないかと思います。
技術を活用してデザイナーの作業効率を改善することや、魅力的なグラフィックスにしていくことは、デザイン業務のアウトプット全体に「掛け算」のように影響する重要な仕事であり、やりがいを感じることができると思います。

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